第8章 花宮視点
しっかし、原や古橋が結構な言葉を投げつけても、動じない可愛げの無い女だ。
「ねぇ、板井野ちゃんってキセキの肉便器だったんだってー?」
「ぶっ!!!」
「ザキ汚ない」
「だって!!!」
「私は肉便器ではないです」
「じゃあ、公衆便所?」
「そういうのでもないです」
「ふーん、でも噂じゃそうだよ」
「何それ、最悪ですね」
板井野は顔色一つ変えないが、山崎なんかはあたふたする事が多い。
原も古橋もデリカシーがねぇ。
まったく動じない板井野も女としてどうかと思うが。
瀬戸も驚いているほどだ。
これまでもそういう扱いを受けてきたんだろうなと結論付ける。
板井野はたまに俺の方を目で見てくる。
んで、キツイ顔つきになる。
ラフプレーでもやめて欲しいってか?
言葉にも出さないで、ずうずうしい奴だ。
が、多少考えも変ってきた。
それは板井野達の会話を聞いてだ。
特に山崎の反応だな。
負傷をさせて潰すということをしてきたが、負傷で負けたよりも、エロネタで負けたほうが向こうにとっても屈辱的だ。
そうだろう。
これで動揺しなきゃ、ケガでもさせればいい。
普通の女では無理かもしれないが、板井野はある意味、高校バスケ界では知れている女。
盛大にイメチェンしてるが。
信じる可能性も高い。
さらにいえば、俺自身悪名高い。
花宮ならやりかねないっていう考えを持つだろう。
それは好都合だ。
青春してる奴らが、肉便器に動揺する姿を想像して、笑いがこみ上げてくる。
山崎みてぇに。
こいつはキセキの世代とは親しくないとか言っているが、こっちはちゃんと把握してんだ。
キセキの連中がこいつの見舞いで病院に行ってたって事も。
「ふはっ」
「何1人で笑ってるんですか。気持ち悪いんですけど」
「テメェにも役にたってもらうからな」
「な、今でも十分に役に立ってるじゃないですか」
もっとだよ、バァカ。
試合会場まで帯同させるには、やはり霧崎の生徒になってもらった方がいいか。
1年の女を少し減らせば、追加募集をするだろう。
こいつも肉便器呼ばわりをこれから広められて怒るか?
それとも負傷者が出なければと目を瞑るのか。
ま、どうであれ、馬鹿な女だ。