第8章 花宮視点
苛立ちに任せて顔を叩く。
普段俺自身が手をあげることは無いが、どうも癪に触った。
顔は止めてくださいって言いやがったから、望み通りに腹に蹴りを入れる。
そうとうキたらしく、しゃがみ込んで震えている女を無理矢理上げさせる。
希望に応えてやった俺に、感謝の言葉でも言えよ。
!
なんイったみたいな顔してんだ、こいつ。
目を潤ませて頬が染まっている。
さっきまでの澄ました顔とは大違い。
俺と目が合う。
「…………あ、ありがとうございます」
「は?」
何度目かのまぬけな声が出た。
もちろん出したのは俺。
意味がわからねぇ。
確かに感謝の言葉を言わせようと思っていたが、自分から言
いやがった。
まだ俺は何も言っちゃいねぇ。
板井野は言ってから、眉をキツく顰め嫌悪感を露にする。
「ふはっ」
おもしれぇ。
従順そうな顔をしたと思ったら、この顔だ。
また澄ました顔に戻りやがった。
面白いオモチャを見つけたと、俺は内心にやける。
キセキの連中に、打撃を与えるという意味でも有効な女だ。
こいつを霧崎に入れたら、面白くなるだろう。
別に勝ちたいわけじゃない。
だが、この女はいい。
そう思った。
そうなりゃ、板井野を入れるために、教師にかけあわねぇとな。
俺は学校じゃいい子ちゃんだ。
教師からの覚えもめでたい俺にしてみれば容易いことだ。