第6章 木吉視点
もう好代に残された手術はない。
明日は、顔の包帯もとると言っていた。
緊張してるのか、いつもよりも声が硬い。
好代と屋上に来ていた。
屋上だけあって景色がいい。
ここからでも海が見える。
海か。
夏には、泳ぎに行きたいな。
誘ったら、好代は受けてくれるだろうか。
治っていたらね、と小さく笑う好代が可愛いと思った。
まだ顔を見たことはないけれど、好代はきっと可愛いんだろうな。
身体もこんなに小さくて。
力を入れたら壊れてしまいそうだ。
だから、守ってやりたい。
不安そうする好代につい言ってしまった。
好きだって。
縋り付いてくる好代に俺は心が満たされる気がした。
頼られている。
っていうのは、いいもんだ。
いつもの澄ました声が揺れて、不安だって言うのが分かる。
きっとこっちが本当の好代なんだ。
そう思ったら、いても立ってもいられなくなった。
無理しなくていい。
もっと素をさらけ出していい。
俺を受けいれて欲しい。
俺にお前を守らせてくれ。
その日に答えはくれなかった。