第6章 木吉視点
たまに、この病院でキセキの世代を見る機会があった。
向こうは俺には気づいていなかったが、好代の病室の近くなんかで見かけた。
見る回数が多かったのは青峰と、灰崎か。
自分と同じくらいの背の人間は病院には少なく嫌でも目立っていた。
だけど好代にそれとなく聞いてみれば、見舞いは親友以外は来ないと言っていた。
まだキセキは許されていない。
帝光が今年の全中で圧勝したっていうのは知っている。
月バスでも大きく扱われていたし、さすがはキセキの世代。
再戦するのが恐ろしいくらいだ。
きっと対戦相手は格の差に心を折られた。
決勝戦はもちろん、それ以外の試合でも。
だからあんな事になってしまった。
噂好きのじいさんが記事を見せてくれた。
結果に腹を立てた一部の部員がネットでメンバーを集めて少
女を暴行したとあった。
ゴシップだらけの記事だから、実際のところは分からなかったし、某球技と書かれていてバスケとは分からなかったが、バスケをしている俺にしてみれば、帝光の事にしか思えなかった。
そりゃ、あの記事は好代の事だとは分からないし、聞くこともできない。
目に見えない傷を負っているはずだ。
それを深くする質問はためらわれた。
自分に非は無いのに、帝光のせいでたくさんの悪意を受けたのに。
好代は誰も非難しなかった。
あまつさえ、自分を暴行した相手のことも。
自分が夜中に歩いていたのが悪かったなんて、恨み言の1つや2つ出てきてもよかったはずなのに。
まったくどうしようもないですよねって苦笑しながら言う、
好代に胸が痛んだ。
本当のことを話してくれ!って言いたかった。
抱え込むのはよくないことだ。
俺は、まだ好代に心を許されていない。