第2章 灰崎視点
女の名前は板井野好代。
俺は好代と呼んで、祥吾君と呼ばせた。
はじめは灰崎君と呼んできたから名前で呼ぶように言った。
どうでもいいことだが、俺は人のことは名前で呼び呼ばれる方がしっくりくるタイプだった。
俺は好代の口から白状させようと思った。
他人の罰ゲームのネタに使われるなんてごめんだ。
コイツに痛い目にあわせて、今後そんなことが起きないように警告のつもりだった。
機嫌が悪い時は容赦なく、殴った。
サンドバッグになりたいんだろって、言うと好代は何も言わなかった。
すぐに根をあげると思ってた。
だけど、好代は中々頑固だったのか、口を割らなかった。
一言謝れば許してやろうと思ってたのに。
ある日、顔を殴った。
女だし顔を傷つければ白状する気になるだろうって思った。
けどそうではなかった。
好代は化粧をして学校に登校してきた。
驚いた。
きっと跡になってしまったのを隠すためなんだろうけど。
6月という中途半端な時期にグレた好代を教師も心配していた。
新入生代表に選ばれるくらい成績がよかったらしいし。
俺のところにも忠告がきた。
「お前と付き合っていると聞いたが、板井野はお前と違うんだ。別れろ」
なんて高圧的に言ってくる教師がムカついたから、その鬱憤を好代で晴らした。
散々痛めつけてやったというのに、好代は俺から離れない。
なんで俺から離れないのかと聞いたら、普段の澄ました顔をきょとんとさせた。
「そんなの、祥吾君が好きだからに決まっているじゃないですか」
嘘だ。