第1章 きっかけ
貴「…総悟さぁ、なんだかんだ土方くん大好きでしょ?」
総「なわけあるかィ」
貴「ふーん。…あんな事するよーなあんたが、なんでもてるんだろーね?」
総「はぁ?」
貴「とぼけないでよ。こないだも呼び出されて、告白されてたじゃん」
総「べつに。大して嬉しくねーし」
貴「ふーん」
総「じゃあお前、銀八以外の男に告られて嬉しいのかよ。」
貴「……え?」
総「答えられねー気持ち伝えられて、嬉しいのかって聞いてんだよ」
貴「……そーだね」
総「………」
自分で聞いておきながら落ち込む。何やってんだ。
総「……ほら、ついたぜィ」
貴「…よっと…さんきゅ!このまま教室いく?」
総「あー、俺自販機寄りてーかも」
貴「あ、私も飲み物買お!」
総悟は、朝一番からと一緒に居られる事が不思議な出来事のように思えた。今まで会えばちょっかい出してきたが、朝一緒に登校したり、一緒に自販機の前に立つ事なんてなかったから。ましてや自転車に二人乗りする事なんて、総悟にとっては奇跡のようなことだった。
それが、今は一緒に登校して、一緒にジュースまで買って、教室に二人で向かっている。無謀な恋だとわかっていただけに総悟は内心嬉しかった。しかし、ポーカーフェイスの彼がそれを顔に出すことはない。
貴「ねぇ、総悟、そんなムスッとしなくてもいいじゃん!朝の、神楽ちゃんのことは仕方ないよ!あの二人、前から仲いいし……」
総悟はむすっとした顔をして、頬杖を付きながら紙パックをすする。とは目を合わせない。
総「だから!てめーのその話題がムカつくんでィ!!何で席がお前と前後なんでィ!!」
貴「だから!なんで私がそんなにキレられなきゃないのよ!!席のことは言ってやるなや!ずっとこの席だろーが!!」
席につきながら二人はぎゃあぎゃあ言い合う。そこに神楽が入ってきた。
神「!おはよーアル!見たか?私の漕ぐ自転車!最速の記録をたたきだしてやったネ!!」
貴「あ!神楽ちゃん、おはよー!う、うん!見たよ!すごい速さだったね…」
は総悟をちろりと横目で見る。総悟はさっきの体制と変わらず、目線だけ窓の外を見ていた。