第3章 エースと顧問
銀「今のお前と手合わせするつもりはねーよ。俺と「剣道」したいなら、精神統一して集中力が切れない時にまた相手してやるわ。じゃあな」
銀八は振り返りながら手を挙げると剣道場から去って行った。総悟はその後ろ姿を見届ける。次第に悔しさがこみ上げてきた。
竹刀を握る総悟の顔が険しい。
一時の感情にまかせて竹刀を振るおうとした。剣道は精神のスポーツだ。ただ感情にまかせて竹刀を振るうだけではただのチンピラと変わりない。
総「アホか俺は…」
総悟は頭をぐしゃぐしゃと掻くとの方を見た。心配そうな顔で総悟を見つめていた。
総「帰りやすか。またせてすまねぇ。」
貴「いや、わたしは大丈夫だよ。てか銀ちゃんと何かあったの?」
総悟に駆け寄るとはタオルを渡し、心配そうに総悟に尋ねた。
総「べつに。エロ本の袋とじどっちが先に破ったかっていうくだらない喧嘩でさぁ」
貴「何そのくだらない理由。そんなんであんな雰囲気になっちゃうあんたらってすごいわ」
総「いつもは怒らないんですがねィ。たまたま俺が金出したエロ本だったのさ。常識的に金出した奴が袋とじ破るのが筋だろィ?」
貴「いや、わたしにエロ本の常識とやらの同意を求めないでくれる?」
総「袋とじ破るのは儀式的なもんなんでさァ。銀八は袋とじを破いた挙句、中のDVDまで先に見ようとしやがって…」
貴「あ、もういいです。その話は。早く着替えてきてよ」
総「おめーもジャージに着替えやがれ!走って帰るんだからな。忘れてんじゃねーぞ」
総悟はに蹴りを入れる。ギャアギャアと喧嘩しだす二人を、職員室から銀八が眺めていた。
銀「ったく。ギャアギャアギャアギャアやかましいんだよ。発情期ですか、コノヤロー。」
だるそうに二人の様子を眺める銀八は、総悟の言葉を思い出す。
自分が買ったエロ本ね…
お前はそう思ってるかもしれねーけど、案外そのエロ本、俺が先に金出して買った奴だったりして。
そうなるとお前は非常識ものだ。俺より先に袋とじを破ろうとしたんだから。
銀「あーあ。男ってホントバカだよなぁ。そして俺もとんでもないバカだわ」
手元にあるいちご牛乳を見る。昔から大好きないちご牛乳も、タバコとの相性は未だに悪かった。