第3章 エースと顧問
ーーーーーーー
貴「はぁっはぁっ…はぁっはぁっ…」
総「おーい。何歩いてんでィ。ちゃっちゃと走んなせぇ」
帰り道、私は総悟に自転車で追いかけられながらジャージ姿で走っていた。
貴「ちょ…総悟…!これっ…きつすぎ…!!」
マラソンは家に帰るまでの間だけ。私はあまりのきつさに土手道で足を止めると、汗だくの額をぬぐい後ろにいる総悟を見た。総悟はけだるそうな表情で、どこからもってきたかわからないメガホンを私に向けると自転車を止めて話し出す。
総「まだ2kmも走ってねぇだろィ?まだまだ走るぜ。こっちは何の利益もねーのにダイエットに付き合ってやってんだ。しゃきしゃき動きなせェ」
貴「わかりましたよ。動きますよ!」
あたりはもう暗くて、総悟の乗っている自転車のライトの灯りと、少しの街灯だけが足元を照らす。横にはもう真っ暗で見えない川の水音と、風でなびく草の音がサラサラと聞こえる。
私はまた走り出すと、先ほどの剣道場でのやり取りを思い出していた。
ーーーーーー
貴「土方くん、ちょっと気になる事があるんだけど」
総悟が制服に着替えてる間に、先に着替え終わって部室から出てきた土方には声をかける。
土「あ?なんだ?」
土方は振り返り、の呼び止めに応える。
貴「私よくわからないんだけど、生徒が顧問に手合わせをお願いするのってそんなに珍しい事なの?」
私はどうしてもひっかかった。総悟が銀八に手合わせをお願いした、あの周囲の反応。土方や近藤までも動揺を隠せないでいたことが。
土「…まぁ、普通はそんな珍しいことじゃねぇと思うが…」
土方は壁に寄りかかると、腕組みをしながらを見る。
土「…銀八は滅多に道場に来ない顧問だって言うのは知ってるよな?」
貴「う…うん…」
土「銀八は滅多に来ねぇし、来たとしても俺たちの様子を見に来るだけだ。手合わせは基本しねぇ。だが条件があって、それをクリアできれば奴と勝負できるんだ。」
貴「条件?」