第3章 エースと顧問
銀八のヤローが何を考えてるのか、俺にはイマイチよくわからなかった。
自分がに好かれていることに気づいている?
生徒の気持ちに応えようとしている?
一時の遊びか。それとも首をかけての本気の恋か。
国語準備室を去った後、そんなことを考えながら剣道場に向かう。
扉を開けるともうとっくに練習は始まっていた。
「遅くなりやした」
「沖田先輩!!お疲れさまです!!」
後輩達が道場に入ってきた沖田に一斉に挨拶をする。武道は他の競技に比べ上下関係が厳しいと共に、作法についてもうるさい。先輩達の教えをきちんと守り次の後輩に引き継いでいく。沖田も最高学年だが、道場に入るときの礼は忘れずに必ずする。
総「お願いします」
道場に一礼する総悟。先ほどの制服姿とは打って変わり、練習用の袴に着替え、防具を取り付けていた。
「じゃあ総悟、俺と一本手合わせ頼む!」
そう大きな声で話しかけてきたのは、部長の近藤だ。剣道部の中でも筋肉質でガタイの大きな彼も相当な腕の持ち主。
総「近藤さん、こちらこそお願げーしまさァ」
総悟は正座すると、面の防具を取り付ける。最後に籠手の防具をつけると、竹刀を持ち立ち上がった。
総悟は目を閉じながら、心を無にするよう精神統一をはかっていた。
集中しろ。
さっきのことは忘れる。
精神を竹刀に、足先に、全身に集中させる。
「はじめ!!!!」
タンタン!!!!ダダン!!!
竹刀のぶつかり合う音と、床に響く足の音が凄まじい。
全国でも名をはせる銀魂高校の剣道部。その部長と、エースが試合しているだけある。先ほどまで練習に没頭していた後輩達も、振り返ってしまうほどの轟音だ。
土「はじまってんな」
貴「総悟。すごい…巨体の近藤くんを押してる…」
総悟はわずかな隙を見抜き、近藤の竹刀を払う。
総「面!!!!!」
「一本!!」
総「はぁはぁ… 」
お互いに竹刀を納めるように持つと、礼をし防具を外し出す。
近「はぁーはぁー…さすが剣道部のエース!やられちまったなぁ!」
総「は…あぶねーところでした…」
総悟は苦笑いすると竹刀を横に置き、近藤の横に座る。