第1章 きっかけ
総「お前、銀八がどんな女が好きかわかるかい?」
貴「そ、それは……よくわかんないけど…」
総「年上で教師、俺らとは年代も立場も違う。そういう男をどう落とすか…一人で落とすには結構難関だとおもいやすぜィ?」
貴「じゃあどう……」
総「そこで俺の出番でさァ。銀八とはエロ本貸しあう仲なんでねィ。大体好きな女のタイプはわかりまさァ。」
貴「え”……!!」
総「俺がお前を銀八好みのいい女にプロデュースしてやりまさァ」
自信満々な総悟の笑み。その裏に隠された総悟の内側に嫌な予感を覚える。
総「なーんか面白そうじゃないですかァ?」
貴「おい!完全におもしろがってるよね!?あんたほんとに協力する気あんの!?」
総「まかせなせぇ。大船に乗ったつもりであんたは堂々としときゃーいいんでさァ」
貴「いや、沈没しかけた船に無理やり乗せられた気分なんですけど……」
総「ま、そうと決まれば明日から色々特訓してくんで、覚悟しといてくだせェ」
総悟はカバンをもち、肩に背負うように掛けると公園を出ようとベンチから立ち上がる。
貴「…あ!総悟!…総悟も好きな人いるよね?」
総「は…?」
総悟は驚いたように振り向く。
貴「…神楽ちゃんでしょ?」
少し沈黙になる。口を開いたのは総悟だった。
総「……ああ…。……本気で好きな奴とはなかなか結ばれねーよな」
総悟は少し寂しそうな顔をして、少しだけ不器用に笑った。
貴「…やっぱり…!お互い頑張って恋愛成就しようね……!」
総「…おー。じゃあな。お前も明日は、もっと銀八に素直に接しなせぇ」
総悟が歩きだす。
総「…………素直になんなきゃねーのは俺だろーが……」
俺ァなにやってんだ。間接的に失恋したとはいえ、あのゴリラ女を好きなはずねーや。やけになっちまって情けねぇ。
しかもプロデュースってなんだァ?好きな奴の恋愛成就の手助けなんかごめんですぜ。これはうまく利用させてもらいやすぜィ?
怪しく笑う総悟の表情は見えない。