第2章 Sweet Time~恋のチョコチョコ大作戦~
夕餉も終わり、就寝時間まではまだ時間がある。
くりちゃんは、ゲームに夢中だし。
ちょっと、散歩でもしてこようかな・・・。
そう思った僕は、くりちゃんに「ちょっと散歩してくるね」と言って部屋を出た。
本丸の敷地は結構広いから、散歩をするにはちょうどいいんだ。
「今日は月がきれいだなぁ」
本丸から少し離れた池のほとりに腰を掛けて、空に浮かぶ月を眺めていた。
でも、僕の心を占めているのは・・・彼女の笑顔なんだけどね。
その頃、本丸では主が僕の事を探していたみたい。
後から知ったんだけど。
「はぁ、はぁ、やっと見つけた」
ん?これは主の声?
まさか、ここにいるはずは・・・と思って振り向いてみる。
「光忠~、探したよ~」
そこには、ちょっと息を切らした彼女が立っていた。
「え、主?こんなところまで僕を探しにきたの?」
なんて間抜けな質問をしてしまう。
「そうだよ。どうしても渡したいものがあって。今日はバレンタインデーだから、光忠にチョコ作ったんだ」
そう言って、彼女がきれいにラッピングされた箱を僕の前に差し出す。
「主、チョコなら朝もらったよ。すごくおいしかったよ」
いまいち状況がのみ込めない僕は、朝もらったチョコレートの感想を彼女に伝えた。
すると彼女が
「もう、受け取ってくれないの?」とちょっと悲しい顔で僕に聞いてきた。
さすがに僕も状況を把握した。
彼女が、僕の為に僕だけのチョコレートを作ってくれた。他の刀剣達とは違うチョコレートを作ってくれた。
そして、それを渡すために探しに来てくれた。
これって・・・
期待しちゃうよね。
主?どういう意味なのかな?
「主、ありがとう。僕にだけに作ってくれたんだね。すごく嬉しいよ」
もうこれしか言えなかった。カッコいい言葉なんて言えなかった。
僕の言葉を聞いた彼女は
「よかった~。光忠には特別に渡したかったから!フォンダンショコラだよ。うまく出来たと思う!」
そう言って、大好きな笑顔を見せてくれた。
箱を開けてみると、そのには2色のきれいなチョコレートケーキが入っていた。
ん?これはメッセージカード?
「あ、それは後で読んで!ね?」
そういう彼女の顔はちょっと赤かった。
「じゃあね!!」と帰って行く彼女を見て
期待してもいいのかな・・・なんて思ってしまった僕。
お返しはカッコよく決めないとね。
END