第2章 Sweet Time~恋のチョコチョコ大作戦~
燭台切光忠 (燭台切→審神者)*片思い
そういえば、昨日短刀くんたちが
「明日はバレンタインデーと言って、好きな人にチョコレートをあげて想いを告白する日なんですって!!」と話していたっけ。
しかも、主から
「明日の朝餉の時間まで台所をお借りします!」
と言われちゃうし。
「主は・・・誰かにあげるのかな」
誰もいない台所に、僕の独り言がむなしく響く。
包丁の手が止まっていたらしい。
遅れてきた歌仙くんが
「どうしたんだい?」と顔を覗き込んでくる。
「なんでもないよ。ボーっとしちゃってた」
と自嘲気味に笑ってみる。
「そうかい、体調がよくないなら休んでもいいよ?」
心配そうに聞いてくる歌仙くんに
「大丈夫だよ、さあ続けようか」
と言って、また包丁を動かし始めた。
いつもと変わらない朝の風景。
違うのは、僕の気持ちだけ。
「なんかカッコ悪いな・・・」
そんな風に思いながら、朝餉の準備を進めた。
なんだか、大広間が騒がしい。
乱くんが「主は誰かにチョコレートをあげるの?」なんて聞いている。
聞きたい気持ち半分。聞きたくない気持ち半分。
そんな気持ちで、大広間に食事を運んでいく。
そうして、いつもの変わりのない朝餉の時間が始まる。
「いただきま~す」
気にしない、気にしない。
そう自分に言い聞かせてご飯を食べたのだった。
朝餉が終わると、主が「みなさんにチョコレートを作りました」と言っている。
どうも、日頃の感謝や大切な人にありがとうの気持ちを込めて渡すこともあるらしい。
主は1人1人に「ありがとう」を言ってチョコを手渡していた。
「はい、光忠。いつもおいしいごはんありがとう!」
そう言って、主が僕の所にチョコを持ってきた。
「ありがとう、主」
僕が受け取ると
「光忠のプリンには敵わないかな~」なんて、かわいい笑顔で言ってくる。
主、その笑顔は反則でしょ。
僕の心をどんだけ持っていくんだい?
この気持ちを抑えるのにどれだけ大変か・・・。
「味わって食べるね」
精一杯平常心を装って主にそう言うと
「感想聞かせてね?」
と言って、主は他の刀剣達の所に行ってしまった。
「はぁ、ちょっとしんどいな」
これは僕の本音。
この先ずっと彼女への想いを心にしまったまま行くことができるのかな。