第4章 及川さんと彼女
『徹くん?』
付き合い始めて一ヶ月を機に名前で呼ぶように頼んだ
「ねぇ、澪…。本当のこと言ってくれると嬉しいんだけどさ…、学校で嫌がらせ受けてる?」
『何で、知ってるの…?もしかして、飛雄に聞いたの?』
「…受けてるんだね。」
否定しなかった、俺も彼女も
「相談してよ…。なんか悲しいじゃん…。俺だけがこんなに澪を好きみたいで。」
ちょっと自虐的になってしまう
『そんなことないよ‼︎私だって!徹くんのこと…す、好き…だよ⁉︎』
慌てて俺の腕を掴んで俺を見つめる彼女
真っ赤な顔して俺を好きだと言ってくれる
「なら、隠し事は無し。俺にすぐ連絡して?」
でもさ、俺は嫉妬してる
彼女のことに気付けたトビオに
だから、彼女を縛り付けようとするんだ
『わかった、連絡するね。』
そう言って携帯を持って笑う彼女を愛おしく思いながらも彼女を家に送った
『また、明日…ね。』
家に入る前、彼女はいつも震えてる
「明日なんてすぐ来るよ。ごめんね、朝迎えに来るからそれまで待ってて…。」
いつもの光景
『うん、待ってるよ。だから、早く迎えに来てね…。』
彼女は父に叱られた子供のように俺に縋り付く
彼女にとって長い長い夜が始まる前に、明けてからの約束をする
これもいつもの事
とても怖い暗闇に彼女は吸い込まれていく
彼女のいた場所に向かって1人呟く
「明日も変わらず、澪に会えますように…」