第4章 春の嵐

兄の部屋までやってくると、何やら小声で話す声が聞こえてきた。
なんだろう？と思いつつも
「お兄ちゃん、入るよ～」と言って襖を開けた。

すると、兄も含め中にいた刀剣達が一斉にこちらを向いて固まっている。
手元には、何やら雑誌やDVDが散乱していた。
特に気にすることもなく、中に入って行くと
「あっ、なみちゃん！ちょっと待って！」と清光や安定が慌てて私の方に駆け寄ってきた。
その時、清光が一冊の本に躓いて、その本が私の足元に飛んできたのだ。

「ん？」
足元に飛んできたその本を、何の躊躇もなく拾い上げる。
その瞬間、その部屋の誰もが「もう、だめだ・・・」と思い、中には「なみちゃんに嫌われてしまう・・」とうなだれてしまう刀剣もいた。

『〇〇コスプレ写真集～今週、給食当番＆６時間目、体育～』

私は拾い上げた本のタイトルを言っってみた。
そう、これはエッチな写真集らしく、散乱しているのもその手の雑誌やDVDのようだ。

「ああぁぁ・・」
その場にいた全員が、がっくりとうなだれている。
年頃の、しかも本丸唯一の女子に、エッチな本やDVDで盛り上がっているところを見られてしまったのだから仕方がない。

「なみ・・・これはなぁ・・・」
兄が、申し訳なさそうに私に向かって話しかける。
他の刀剣達も、「なみちゃん」「なみ様」と次々に話しかけてくるので
「えっ？何？この本がどうしたの？」
と普通に返答する。

エッチな本やDVDなんて、年頃の男の人なら当たり前に見たりすると思うのだけど・・・。
逆に「絶対見ません！！」って人の方が怖いと思う。
現世にいたころは、男友達の家で見せてもらったりしたこともあるし、私も一応男女の経験だってあるし。
私は、手元にある本をパラパラとめくり
「へえ、結構かわいいんだねぇ・・・」と感想を述べてみる。

「なみ？お前なんでそんな平気なんだ？」
兄が恐る恐る聞いてくる。
「いやいや、この程度は大したことないでしょう？もっとマニアックなのとかいろいろあるだろうし・・」
と答えると

「ええっ！！」
とそこにいた全員が一斉に大声を上げたのだった。