第1章 序章「異世界の海から」
「ナミさん、記録指針を見てみてください」
「え、ええ…な、なにこれ!」
「どうした?」
「指針がずっとくるくる回っていて使い物にならない!」
「壊れたのか!?」
「いえ、壊れていません。きっと、ここでは意味のないものなんです」
食後の紅茶に口をつけ、カップを置くと、自身の推測などをまとめながら話した。
「ここは、きっとあなた方が航海をしてきた世界とは違う世界…つまり、異世界なんです。このニホンの周りには、アメリカやチュウゴク、様々な島国が存在しますが、ウォーターセブンや空島、アラバスタ…そんな島はどこにも存在しません。あなた方が海賊だと知る者、信じる者もいないでしょう」
「じゃあどうしてお前は俺達の事を知ってるんだ」
「夢を見たんです」
「夢?お前、適当な事言うんじゃねぇ」
「黙って聞け、マリモ」
サンジがゾロを蹴る。
「私は、あなた方の冒険を全て見てきました。夢の中で。まるで、一緒に冒険をしてきたかのように。ルフィさんがフーシャ村を出た、その日からの冒険を」
「にわかには信じられねぇ話だな…」
「でしょうね。…あ、ちょっと待っていてください。証拠になるかは分かりませんが、記録があります」
はそう言って席を立つと、自室から大量の分厚い日記を持ってきた。そう、彼女が夢に見た事を書き綴った、夢日記だ。
その事を説明し、皆に見せると、全員がそれぞれに手を伸ばし、読み始める。
「ココヤシ村の事も書いてある…」
「メリー号の事もだ!」
「エニエスロビーの一件も…」
「バラティエで起きた事がそっくりそのまま書いてあるな」
「ドクトリーヌの事も書いてあるぞ!」
「まるで本当に見てきたかのようだな…」
「見てきました。ゾロさん、あなたが泥だらけのおにぎりを食べた事も知ってます」
「これは、お嬢さんのお話を信じるべきなのではないでしょうか?」
ブルックの案に、皆が頷いた。
「まー、難しい事はわかんねぇけどよ。お前も仲間みたいなもんだったって事だな!」
「え?」
「だって、一緒に冒険してきたもんじゃねぇか!」
そのルフィの一言に、一瞬の頭が真っ白になった。そして、顔が熱くなる。仲間なんてものが、自分に存在するはずない。ずっとそう思ってきた。