第1章 序章「異世界の海から」
「お?」
その青年の頬には傷がある。
そしてなにより目立つのは、麦わら帽子だ。
「なぁ。ここどこだ?」
「お、お前、こいつの仲間だな!?てめぇ、仲間呼びやがったな!!」
「ちょっと待って、私は仲間なんか…」
思考が追いつかない中、なんとか覚束無い否定をする。
「おっさん」
「うるせぇ!話しかけるな!」
「肩に虫がついてるぞ」
「え?あ、これはご親切にどうも…ってだから!!」
「おーーーーい!みんな降りて来いよ!別に危険はねぇみたいだぞー!!」
麦わらの青年が叫ぶと、七人と一匹が、船から顔を出した。
「おいおい本当か…よ…」
煙草を咥えた金髪の青年と目が合うと、青年はわずか三秒で船から降り、二秒での目の前に来た。
「…か、可愛い…」
「あ、あの……」
当のはただ言葉を失い、戸惑うばかりだ。
麦わらの青年と話していた男性のひとりが、突然銃を乱射し始めた。
「もうたくさんだ!化け物たちが!!!くたばれぇ!」
の知っている限り、今船から降りている二人は銃で撃たれても問題はない。残りの船にいる連中にも害はない。
しかし、はそうではない。
それをなんとなく察したわけでもないだろうが、男性のひとりがに向けて発砲した。
は目を瞑るが、痛みはまだない。
恐る恐る目を開けると、緑色の髪をした青年が彼女の前に立っている。下を見れば、綺麗に真っ二つに割れた弾丸が落ちていた。
男性たちは異常な強さの彼らに恐れ慄き、そのまま走り去った。
「おい、大丈夫か」
「……っ」
あまりにも突然、衝撃的な事が起こりすぎて、はついに意識を手放してしまった。