第1章 序章「異世界の海から」
は目を覚ますと、涙を拭った。
今日も長い夢だった。
「…よかった。新しい仲間が出来て」
単純に嬉しい気持ちと、若干の羨望。
はベッドから出ると、早速机に向かった。
今見た夢を留めておく為だ。
二年ほど前から、彼女はとある青年たちの夢を見ている。それも、物語のように。
それが誰なのか、何故なのか、分からない。
ただ、彼らの冒険を、ずっと夢で眺めてきたのだ。
日記を書き終えたは、外の風を浴びようと、部屋を出た。
扉を開けると、目の前には海が広がっている。
そこでしばらく海を眺めるのが、彼女の習慣だ。
目を瞑り、先ほどの夢を思い出す。
すると、額に鋭い痛みが走り、まもなくして一筋の血が流れた。なにかと目の前を見ると、中年の男性三人が、怒りを顕に彼女を睨んでいる。
「お前!いつになったら出て行くつもりだ!」
「…出て行かないわ」
「出て行け!迷惑だ!お前が生まれてからというもの、おかしな怪物は出るし、漁にだって行けない。島のみんなも不気味がっているんだ!」
「それは私のせいなんですか?」
「お前以外に誰がいる!あんな呪われた忌まわしい王と王女の娘だぞ!お前が生まれてからこの島はおかしくなったんだ!」
言葉が返せない。
確かに、それは事実であったのだ。
「昨日も怪物に畑を荒らされた。もう我慢ならない。お前が出て行かないと言うなら、死んでもらう!」
男性のひとりが、銃を構えた。銃口はもちろんに向いている。
さすがに銃で打たれたら死ぬだろう。は少しずつ恐怖を感じていた。
そんな時だ。
「うわあああああ!!!」
大きな音、複数人の叫び声。
何事かと思ったときには、は全身びしょ濡れだ。それは男性たちも例外でない。
現れたのは、大きな船だった。
船首にライオンが象られている。
は、この船を知っていた。だが、この船が目の前に現れるなど、有り得ないのだ。
「うひゃー!びっくりしたな!」
「びっくりしたな!じゃないわよ!あんたが声がする方に行こうなんて言うから!」
「こ、ここ、ここはなんだ、どこだ?危険なところじゃないよな!?」
そんな会話の後、ひとりの青年が船から飛び降りてきた。