第6章 猫カフェのお供に ~海堂薫~
そうして飲み物を一杯ずつオーダーして、私と海堂くんは室内の奥へと進む。
一旦ソファに座って、壁に掛けられた今日の猫ちゃんのリストを二人して見上げた。
その間にも、海堂くんが持っている餌は狙われていた。
じぃーーーっと見ている。
一番の食いしん坊、お芋ちゃんとその弟子、小芋ちゃん。
そしてのっそり動くミコトちゃん。
以下、まだ見分けのつかない子たち。
「――これ、いつあげればいいんだ?」
視線に耐えかねてなのか、海堂くんが私に尋ねる。
「うーん…あんまり早くあげると、餌があるときとなくなったときの落差に悲しみを覚えると思うよ」
「……」
子猫ちゃんや新入りの猫ちゃんたちはおもちゃを使えば遊んでくれるけど、古株たちは餌がなくなったらもう見向きもしてくれなくなる。
ただ、ちょうどいい空間があれば擦り寄ってきてくれる。
たとえば、三角座りしてから膝をブランケットで覆う。
そしてほんの少しだけ、床とブランケットの間の隙間を開ける。
するとそこへするりと入ってくるのだ。
狭いところ、囲われたところが好きな彼らは、ダンボールやビニール袋も大好きだ。
「最後まであげない方がいいのか」
「いや…あんまりお預けすると嫌われちゃうんだよね」
「…難しいな」
「猫だもん」
「……」
あら、黙っちゃった。
難しい顔して。
「お待たせしました。カフェオレとコーヒーです」
「ありがとうございます」
「ッス」
スタッフさんがオーダー品を持ってきてくれる。
猫柄のマグカップに、猫の取っ手のついた蓋が乗っかっている。
「飲んでから、餌やりしよっか。今やったら、零されちゃうかも」
「…ああ」
水飲み場で舌をペロペロしている猫に視線は釘付け。
可愛いなぁ、海堂くん。
子どもみたい。
コーヒーを飲んで落ち着いた後。
餌の袋を開けた海堂くんは、案の定猫にもみくちゃにされていた。
指先に出した餌は瞬く間に舐めとられ、左手に持っていた餌の袋にも猫が群がろうとする。
「うわ! おい、ちょっと待て…!」
肩や腕に猫たちが前足をかけて乗り上げてくる。
あわあわする海堂くんが凄く面白い。
カシャッカシャッと何度もその様子を写真に収め、ついでに動画も撮る。
後で送り付けてあげよっと。