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【テニプリ】短編集

第7章 テニスのお供に 〜海堂薫〜


 私の背後に海堂くんが立ち、右手を添えてラケットを振る動作をサポートしてくれている。
 いや、ちょ、待って!
 さすがに意識しちゃうんですけど…!
 手!!!
 手が、手が!!

「こう、だ。わかるか?」
「は、はい! コーチ!」

 心の動揺を悟られたくなくて茶化すように言う。
 海堂くんは何言ってんだ、と呆れた声を出しながら離れて行った。

「後はしっかりボールがラケットに当たるところまで見ろ」
「はーい」

 そうして私は何と!
 半分近くのボールを当て返すことができたのであった。

「おおお…感動…!」
「大げさだ」
「いやいや、凄いよ! やっぱプロに教わるのは違うね!」
「プロじゃねぇ」
「違うけど、違わないって。いやー、海堂くんと来て良かったよ〜」

 ラケットを置き場に立てかけながらそう言うと、海堂くんは「…ま、たまにはいいな」と言ってくれた。
 良かった。
 私だけがやたらはしゃいでしまったから、ちょっと申し訳なかったんだけど。
 それなりに楽しんで……ん?
 私のどんくささに笑ってただけ…か、な?

「んじゃま、帰りますかー」
「そうだな」




 駅までの道のり。
 すぐ隣を歩く海堂くんはいつも通り無口で相槌をたまに打つ程度。
 私はいつも以上に喋ってしまっていたかもしれない。
 何故か。
 それは……海堂くんの手が気になってしまうから!
 さっき、テニスの素振りを教えてくれたときに触れた右手。
 どうしたことか…私の身体がおかしい。
 身体?頭かな?
 その、すごく…すごく、手を繋ぎたくなってしまっているのだ。
 これはもしかして。
 いや、でも。
 好きでも何でもない人と手を繋ぎたい、なんて思います?
 思わないよね、きっと。


 どうやら私…海堂くんのこと、好きになってしまった…………ようです。
 いや、でも好きって何?
 どういうこと?
 本当に好きなの?

 そんな悶々を抱えたまま。
 その日は海堂くんとバイバイしたのであった。




 end



 
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