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【テニプリ】短編集

第6章 猫カフェのお供に ~海堂薫~


 約束の木曜日。
 猫カフェに行くのにスカートなんか履かない。
 というか、元々ほとんど履かないから関係ないんだけども。
 ぴったりしたパンツだと膝が曲げにくいから、ゆったりしたものを選ぶ。
 そしていつも通り大学の授業を受けて。
 三限が終わったところで、どちらからともなく声を掛けて一緒に教室を出た。
 目的地は大学前の駅から三駅の場所だ。

「海堂くん、さっきから何見てるの?」

 駅のホームに到着後、電車に乗りこんだ今もずっとスマホばかり見ているので、私は気になって問いかけた。

「……」

 ずいっとスマホを目の前に出されて、私は笑った。
 予習ですか。
 海堂くんはこれから行く猫カフェのブログの、猫紹介のページを見ていた。

「私はね、ロシアンブルーのミコトちゃんが好きかな」
「ああ…コイツか」
「うん。ぽっちゃりしてるお尻が可愛い」
「…子猫、抱っこするのはダメなのか」

 猫カフェのご利用の注意を読んだのか、わずかにしゅん、としたような声で海堂くんが尋ねてくる。
 無理矢理抱っこしようとするお客さんがいたらストレスかかるしね、それは基本的には禁止なんだけど。

「抱き上げるのはダメだけど、おもちゃで誘導して膝に乗せることはできるよ」

 私の言葉に、海堂くんはきゅっと眉間に力を入れた。
 ニヤケそうになってるのを我慢している顔だ、と私は勝手に思ってるけど、きっと間違っていないはず。
 この前私がお勧めするラーメン屋さんに連れて行ったとき、一口目を食べてそんな顔をしていた。
 最初は口に合わないのかな、と思ったけども、そうじゃなくて緩んだ顔を見られるのが恥ずかしいようだった。
 …うん、可愛い。
 同い年の男子にそういう感想を抱くのも変な話だけれど。
 猫ちゃんたちの可愛さに、海堂くんが耐えられるかどうかが、今日一番の楽しみだったりする。

「猫じゃらしとか、おもちゃは店内にあるものなら自由に使って大丈夫だし、写真もフラッシュさえ切っておけば撮り放題なんだ」
「……」

 こくり、と頷いて何かを決意した!といった面持ちの海堂くん。
 そんなに気を張らなくても…と密かに笑みが零れた。

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