第5章 ラーメンのお供に ~海堂薫~
図書館に用がある、という海堂くんとは30分後に駅で待ち合わせることにした。
私は前から気になっていたラーメン屋さんに行けるとなって、上機嫌で駅前のコンビニへ行く。
雑誌の立ち読みをしながらそのときを待った。
列のなくなったラーメン屋の暖簾をくぐる。
「あ、券売機制だ」
「もう決まってるのか?」
「うーん…一番普通のやつにする」
そんな会話をしつつ、二人で券を手に空いたテーブルに向かいあって座った。
海堂くんは券とスタンプカードを一緒に出す。
私も店員さんに券を渡して、コップに水を入れて待った。
「いつも一人で来るの?」
「いや…ツレと来るときもある」
「そっか」
そこではた、と気づいた。
ヤバイ。
海堂くんって、彼女いたっけ。
いたような。
うん、いたと思う。
ど、どうしよう?!
「ごめん、私何も考えてなかった…!」
「ん?」
「彼女いるのに誘うとか、私最低だよね?! うわぁどうしよう、彼女さんに謝らなくっちゃ!」
これはまずい。非常にまずい。
女と男のいざこざに巻き込まれるなんて冗談じゃない。
私はそういう男女の恋愛だとかに興味がないし。
ラーメン食べたかっただけだし。
「…別に、問題ない」
「でも」
「別れたし」
「……別れたの?」
「別れたってか…、自然消滅ってやつ、だな」
「そ、そうなんだ…」
「だから気にすることねぇよ」
「お待たせしましたー!!」
いつ別れたの?とか。
自然消滅ってどういうこと?とか。
ちょっと気になったけど、目の前に置かれたラーメンがそんなことふっ飛ばした。
「うわ! これが食べたかったんだよー!」
「ほら、箸」
「あ、ありがとう」
「いただきます」
「いっただきまーす」
海堂くんが差し出してくれた箸を受け取ったら、海堂くんは丁寧に両手を合わせてから食べだした。
男の子なのにちゃんとしてるなぁ、と思いながら私は麺をすする。
あ、先にスープ飲むの忘れた。
まぁいっか。
チャーシューが私好みで、脂身が少なくて肉厚。
麺は縮れ麺。
ずるずると啜れば、スープが絡んで口の中へ。
ああ、美味しい。
くふふ、と笑みが止まらない。