第11章 xxx 10.指名予約
「こーたろーくんん」
「なあーにー」
「おにぎり買ってきてー」
「やーだよー」
恒例となりつつあるスタッフルームでの夜食タイム。
堅治とのプレイで体力を使い果たした私の問いかけに、光太郎が気のない返事をした。
カウンターにいる彼は現在、レジに貯まった札束を数えるのにご執心だ。さっきから何回も勘定を間違えてやり直している。
「ええー光太郎のケチー」
「この俺をパシろうなんてなあ、一億と二千万年早えんだよ」
「うわあ……有りがちな返し」
薄いカーテンを越えた会話。
ゴゥン……と低く呻いた暖房が、埃っぽく渇いた風で私たちの頬を撫でた。
「合体する?」
「絶対しない」
「きもちいいィ〜!ってさ」
「しないってば。しつこい」
今日も今日とて至極どうでもいい会話に花を咲かせていると、そこへ、一本の電話が鳴り響く。
客電用に置かれたそれ。
予約申込みの電話が掛かってくる場合がほとんどだから、光太郎はここぞとばかりに人懐こい声で応じる。
「お電話ありがとうございます! ピンクオウル一番街店の木兎が承……って、なんだ、……京治くんじゃん」
彼の名前が、聞こえた。
xxx 10.指名予約___fin.