第3章 xxx 02.及川徹
及川徹はどうやらこの町のどこかで働く人間らしい。話から察するに、彼もまた夜の仕事に従事する者らしいのだけれど、よく話が尽きないなこの人。
「ああーイライラする!」
一際大きな声で言った彼は、顔面からベッドに突っ伏した。なかなかに背がお高いので、足が簡易ベッドからはみ出している。
いわゆるうつ伏せの体勢になっているのだが、及川徹は、こちらに顔も向けずにこんなことを言い出した。
「新入りちゃん。腰揉んで」
「あ、やっと仕事させてくれる
気になりましたか。よかったデス」
「性的な意味じゃなくて!」
ほらほら早くう、みたいな気味の悪いおねだりを付け加えてくる。なんだろう。不思議な人だけど(非常にめんどくさいとも言う)、悪い人ではなさそうだ。
「……失礼します」
おずおずと彼の太ももを跨いで、高級そうなスーツの上から腰を探した。
な、なんつう高い位置に腰があるんだ。モデルか。モデルなのか。などと驚いたのは私だけの秘密である。