第3章 xxx 02.及川徹
「もうちょっと右」
「はい」
「もっと強く」
「……ハイ」
何このコキ使われてる感。
まったくもって釈然としない。でも、まあ、奉仕をしなくても時給は発生してるので良しとする。
「あの、オイカワさん」
「徹でいいよ」
「じゃあトオル」
「いきなり呼び捨て!?」
んんんめんどくさい。
じゃあもうなんて呼べばいいんだ。トオルくん?トオルちゃん?トオルさま?自分で徹でいいって言ったくせにもう!
「ええと、徹くん」
「はい何でしょう」
「もうお時間デスヨ」
あと数秒で00:00になりそうな──サクランボ型なのはギャグなんだろうか、キッチンによくあるタイマーを指さした。
及川徹、改め、徹くんは「えっもうこんな時間!?」と飛び起きる。なんだか焦っている様子だけど、しかし、彼が部屋を出ていくことは一向に、ない。
「君って話しやすいからさあ、
ついつい時間を忘れちゃったよ」
「はあ……(私ほとんど
黙ってるだけでしたけど)」
「じゃ、これお小遣いね」