第3章 xxx 02.及川徹
「もう聞いてよ新入りちゃん!
それでね、そのお客さんがね!」
約一時間この調子である。
なにやら光太郎と顔見知りらしい「トオルくん」こと、及川徹は、店に来るなりマシンガンのように喋り続けていた。
「ね! ヒドイでしょ!?」
「はあ……そうですね」
「それで大事なのはここから!」
「(まだ続くの?!)」
大変見目お麗しい及川徹が、なぜ、ついさっき入店したばかりの新人嬢の部屋に通されたのか。それは、それがこの店の【暗黙の了解】だからである。
「やだまた来てんのアイツ」
「新人の子かわいそー……」
「ま、でもうちら的にはラッキー」
「「「もう朝まで及川の愚痴
聞かなくていいんだもんね」」」
先輩がたの大きすぎる世間話に、白目を向きそうになる私。尚も自分の働いている店について愚痴りつづける彼、及川徹。
長い(長すぎる)夜は、まだ始まったばかりなのであった。