第11章 xxx 10.指名予約
夢を見ていた。
それはとても昔のことのようで、つい最近の出来事のような、不思議な夢だった。
『どこいくの……おかあさん』
今にも泣きだしそうな少女の声。
覚えてる。まだ幼かった私の声。
華美に着飾った母から匂うのはシャネルの五番。これが、私のおかあさんの匂い。彼女は幼い私をひとり残して、夜な夜などこかへ出かけていく。
『いかないで……おとうさん』
大きくてたくましい背中。
大好きだった、父の背中。
ちょっとガサツに私の頭を撫でる手が、慈愛に満ちたその笑みが、大好きだった。私の自慢の、おとうさん。
『ごめんな。カオリ、ごめんな』
父は謝っていた。涙を流して。
最期に見たおとうさんの背中はやっぱり大きくて、でも、すごく冷たくて。
『おと、さん……どうして……どうしてずっと眠ってるの……? 目をあけてよ……おとうさん!』
ああ、そうだ。そうだったね。
どうしてこんなに大事なこと忘れてたんだろ。
父は、おとうさんは、家を出ていったんじゃなくて本当は──