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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第11章 xxx 10.指名予約



 夢を見ていた。
 それはとても昔のことのようで、つい最近の出来事のような、不思議な夢だった。


『どこいくの……おかあさん』


 今にも泣きだしそうな少女の声。
 覚えてる。まだ幼かった私の声。

 華美に着飾った母から匂うのはシャネルの五番。これが、私のおかあさんの匂い。彼女は幼い私をひとり残して、夜な夜などこかへ出かけていく。


『いかないで……おとうさん』


 大きくてたくましい背中。
 大好きだった、父の背中。

 ちょっとガサツに私の頭を撫でる手が、慈愛に満ちたその笑みが、大好きだった。私の自慢の、おとうさん。

『ごめんな。カオリ、ごめんな』

 父は謝っていた。涙を流して。
 最期に見たおとうさんの背中はやっぱり大きくて、でも、すごく冷たくて。

『おと、さん……どうして……どうしてずっと眠ってるの……? 目をあけてよ……おとうさん!』

 ああ、そうだ。そうだったね。
 どうしてこんなに大事なこと忘れてたんだろ。

 父は、おとうさんは、家を出ていったんじゃなくて本当は──


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