第10章 xxx 09.彼氏(仮)
「え……ちょ、黒尾、サン……?」
彼は強引に私の肩を抱いて、岩泉さん達に背を向けて歩きだす。
研磨も何も言わずに私の隣を歩き、再び視線をスマホに戻した。
うちの店の前に置かれた大型バイク。
あのバイクは黒尾の私物であって──さっきあれに跨ってたし、さらにヘルメットがふたつ用意されてる。どう考えても研磨を実家に送り届けるためだ。
それが、なぜ、三人で駅に向かっているのでしょうか。
「待てよカオリ!話聞いてくれ!」
背中のほうで岩泉さんの声がする。
その声に私よりも早く振り向いた黒尾は、ニヤリ、悪どい笑みを浮かべて──
「あー……悪いんだけど、もうカオリに関わるのやめてくんない? こいつ、俺のなんで」
「は!!?」
研磨と私が同時に、凍りついた。
xxx 09.彼氏(仮)___fin.