第10章 xxx 09.彼氏(仮)
はた、と止まる足音。
まず最初に岩泉さんが立ち止まって、次に、徹くんが動きを止めた。
貴大くんと一静さんは企み顔で目配せをして、一歩引いたところから、ことの次第を静観している。
「……なに、お前ら、訳あり?」
黒尾がすこし身を屈めて、私に耳打ちをした。研磨は弄っていたスマホをロックして、スーツの四人組をジッと見据えている。
「ただの、顔見知り……だよ」
震えそうになる声を必死に抑えて言うと、黒尾は「へったくそな嘘」と気怠げに返事をした。
「カオリ……あのさ、」
口を開いたのは岩泉さんだった。
何を言われるんだろう。
言い訳、弁解、はたまた、──謝られるとか。彼が言おうとしてることが何だとしても、聞くのが怖い。聞きたくない。
岩泉さんの隣から下ろされる徹くんの感情のない視線が、余計に、恐怖心を煽る。
「よし、そんじゃ帰んぞ、カオリ」
一際大きく響いたのは、黒尾の声。