第10章 xxx 09.彼氏(仮)
「て、め、え……俺の大事な幼馴染に、ナニを、しやがった……?!」
これのどこが優しいのか。これの。
手を繋いだままエレベーターから降りてきた私たちを見た瞬間、黒尾は私の頭を鷲掴みにして、これだった。
「いたい!縮む!オッサン!」
「縮めガキ!そのまま埋まれ!」
「やめなよ二人共……近所迷惑」
研磨がちょっと呆れたように言う。
ギャーギャーと歪みあう黒尾と私を煙たがるようにして、早朝のカラスが二羽、大空へと飛びたった。
黒々とした羽がひらり、舞う。
そこへ聞こえたのは誰かの足音。上機嫌に弾む会話の声。ひとり、ふたり、……いや、もっといる。
「今月も俺がナンバーワーン!」
「うるっせえよ黙れ及川」
「今日は何食うかなー」
「俺あれな、卵焼き定食」
う、げ……早速出くわしてしまった。
向かいのビルの脇。
2ブロック先のエリアへと続く曲がり角から姿を現したのは、他でもなく、クラブキャッスルの四人組だったのだ。