第10章 xxx 09.彼氏(仮)
「ねえカオリ」
「……ん、なあに?」
「キスしよっか」
子ども同士がその意味も知らずにするような、キス。唇と唇を合わせただけの温もりだった。
研磨のキスはお花のような味がして、瞑っていた目を開けたとき、それが彼のリップグロスの匂いなのだと知る。
穏やかな鼓動の上昇。
そっと私を押し倒した研磨が、ふと、目元を細めて囁いた。
「キスの先も、……していい?」
返事をする代わりに腕を伸ばして、彼を抱き寄せる。全身で感じる研磨は、彼の言うとおり、とても温かかった。
「……っん、くすぐったい」
子猫が飼い主にじゃれるような研磨の愛撫。熱い舌先がペロ、と全身を巡って、最後に唇に戻ってくる。
「俺はきもちよくなって欲しいのに」
研磨がむう、とむくれた。
彼はちょっと眉に皺を寄せて、それから、私の背中の下に手を滑りこませる。
「くすぐったいのは、もうおわり」
ブラのホックが外されるのと同時に聞こえたのは、彼の、初めて聞く男っぽい声だった。