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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第10章 xxx 09.彼氏(仮)



 どこかでサイレンが聞こえた。

 喧嘩か、アル中か──いずれにせよ、この町に来てから何度も聴いた胸のざわつく音。

 暗幕の隙間から差しこむのは赤色灯の鮮烈な、赤。

「……カオリの手、きれい」

 研磨は、私の右肩に頭を乗せてこちらに体重を預けていた。重ねた手は五指が絡みあい、しっかりと繋がれている。

「研磨の手はあったかいね」

 彼の自宅はここからそう遠くない。
 聞けばそこは海沿いの高級住宅地で、芸能人も住んでいるようなツインタワーマンションの名前だった。

 厳格な父と、働き詰めの母。

 そんな両親の間はずっと昔から不仲で、家にいれば「勉強」「将来」「世間体」について説教されてばかり。

 窮屈な生活から逃げるようにしてこの町に来て、援交で食いつなぐ家出生活をしていたんだそうだ。

 まるで、ドラマや小説の世界から脱けだしてきたかのような、お人形みたいに綺麗な研磨。

「俺、体温高めなんだ」

 私に擦りよる彼は儚げで。

 放っておいたら消えてしまいそうだな、なんて。我ながらメルヘンな考えが浮かんで、パチンと消えた。

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