第10章 xxx 09.彼氏(仮)
「何駄々こねてんだお前……これ以上親御さんに心配かけらんねーだろ。いいから帰んぞ、ほら」
「やっ……いやだ、俺、カオリといる」
「あ゙ァ?」
おふす。これは見事に巻きこまれた。
私を挟んで押し問答する研磨と黒尾。幼馴染として研磨を心配しているのだろうけど、彼と私を交互に睨む黒尾の顔ったら。
まるで仁王像である。怖い。
「いい加減にしろ!研磨!」
弟を諭す兄のような口調で言って、黒尾が研磨の腕を掴もうとした。
「カオリ……たすけて」
研磨の、泣きそうな声。
「わ!私が、責任もって家まで送る!」
言ってしまった。
おまけに両腕まで広げて研磨を庇ってしまった。
ただでさえ鋭い黒尾の目が吊りあがって、口端がヒクリと引きつる。これはヤられる。むしろ逮捕される。
青よりも青く顔面蒼白になって黒尾の反応を待った。
「……ったく仕方ねえな。じゃあ研磨、お前、この店が閉まるまでここにいろ。当直終わったら迎えにくるから」
──過保護か。
こうして、何がどういう訳なのか、私は研磨と夜を明かすことになったのである。