第10章 xxx 09.彼氏(仮)
「だから、研磨とはついさっき裏通りで出会ったばかりだし、なにも悪いことはしてないってば」
「嘘だったら承知しねえぞ」
「全部本当だよオッサン」
「オッ……てめ、俺はまだお兄さ」
「黒尾ッサン」
「……このヘル嬢いつかブチ犯す」
黒尾による事情聴取(ただの圧迫尋問だけど)がはじまって、研磨との仲をあれこれ聞かれる私。その隣で俯いてスマホを弄る研磨。
タイミング悪く来店してしまった客を光太郎が苦笑いで接客して、山本と夜久さんは何やら書類に書き込んでいる。
しばらくそんな状態が続いて、30分。
警官特有の、何度も同じことを聞く聴取に嫌気がさしてきたときだった。
「よーし、そろそろ撤収すんぞー」
黒尾が号令をかけて、立ちあがる。
やっと解放されるね。マジ疲れた。
光太郎と視線だけでそんな会話をして、ほぼ同時にため息をついた。
しかし、ここでまた、ひと悶着。
「やだ……っ帰らない」
黒尾に連れ帰られそうになった研磨が、私の後ろに回りこんで言った。ギュ、と唇を結んで、小さく肩を震わせている。