第10章 xxx 09.彼氏(仮)
「うげっ……黒尾!」
カウンターに頬杖をついて店番をしていた光太郎は、研磨とほぼ同じ反応を見せてそう言った。
「黒尾サン、だろうが。ブタ箱にブチ込まれてえかクソガキ」
口、悪っ……!
ちょっと信じられないという顔で隣を見上げると、光太郎よりも高いところから睨みつけられる。
着崩した制服にゴツい数珠のブレスレット。これが警官だなんて世も末だ。よく採用試験受かったな。
「あ? 何見てんだよ」
「……べっ、別に見てないし」
サッと目を逸らして唇を尖らせた私は、客用の待合ソファに腰かける研磨のほうへ向かった。
「ごめんね……俺のせいで」
しょげた小動物のように頭を下げる研磨。
俯いたまつげは長く、ダークブラウンのマスカラが塗られている。かわいい。ってそうじゃなくて。
研磨はいわゆる女装男子らしく、オヤジ相手の援助交際を繰り返していたんだそうだ。
しかも、援交相手を薬で眠らせてる間に、金だけ抜きとって帰るという気合いの入りよう。
警察に目をつけられるのも当然といえば、当然である。ちなみにこの不良警官とは幼馴染なんだとか。
「ううん、いいよ。大変だったね」
言いながら研磨の隣に腰をおろす。
すると、黒尾と同じく制服警官の二人が、私たちの対面に腰かけた。