第9章 xxx 08.遭遇
ラブホ街を抜けて裏通りを左へ。
全力疾走で中心街を目指す私たちを、数人の男が追う。
「待てやコラー!」
「止まりなさい!」
だんだん近くなる男たちの声。
走りながら首だけで後ろを振り向くと、暗色の作業服のような影が見える。あれ、あの服……どっかで見たことがあるような。
「ねえ!あなた、なんで追われてるの!」
私の腕をひく背中に問いかけた。
走っているせいで声が揺れ、自然と声のボリュームが上がる。
「無事に着いたら話す」
前を向いたまま言うものだから、全然聞き取れなくて。「え?なに?」そう聞き返そうとした私の視界に、突然、眩しい光が飛びこんできた。
直後にバイクのエンジン音が聞こえて、光の正体がヘッドライトだと理解する。理解したのだけれど。
「今日という今日は逃がさねえぞ研磨ァァァ!!」
「げっ……クロ」
これまでより些か大きい声で、お人形のような「研磨」が言った。
ここは路地裏の一本道。
前からはバイクに乗った「クロ」が迫ってるし、後ろからは二人の男が追ってくる。
立ち止まって観念するしかない。そう諦めた私の視力が、今度は、はっきりと男たちの服装をとらえた。
「ちょっ……え、マジ……?」
あれって、──警察官の制服じゃん。
xxx 08.遭遇___fin.