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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第9章 xxx 08.遭遇



「立てる?」
「……うん」

 差し伸べられたその手を握って、ゆっくりと立ちあがる。意外と大きい掌は温かく、私を引き上げる腕も力強い。

「あの、……ありがとう」

 おずおずと彼女を伺いみて、それから小さく頭を下げた。

「どういたしまして」

 くるりと内巻きにカールしたミドルボブ。お人形のような彼女が微笑むと、小麦畑のような金色の髪が嫋やかに揺れる。

 シャンプーのような、いい匂い。

「お姉さん、どこかのお店のひと?」
「……うん。劇場の裏で働いてる」
「じゃあ、俺をそこに連れてって」

 繋いだままの手と、手。
 合わせた肌の感触が急に強くなって、彼女はこちらに背を向けた。──ていうか今、俺って言いませんでしたか。

「走ろ」
「へ?」

「早くしないと捕まっちゃうから」
「え? ちょ、え、待っ……!」

「俺、悪い奴等に追われてるんだ」
「悪いやつら?! どゆこと?!」

 風が頬を通り過ぎていく。前髪がめくれて、おでこに雨粒があたる。

 彼なのか。彼女なのか。
 駆け出した足が鳴らすのはハイヒールがコンクリを打つ音。一方、適当に引っかけたサンダルで走る私。

「足、速っ! ちょ、ちょっと待ってええぇぇぇ……!!」

 一番街裏路地、ラブホテル【Sexy Cat】のネオンの下で、私の絶叫が響き渡った。

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