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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第9章 xxx 08.遭遇



 どれだけ走っただろう。

 いつの間にか降りはじめた雨。急に暗くなった周囲。ぽつぽつと灯るのは、ラブホテルの空室を知らせるランプだろうか。

 肩寄せ合って歩く男女と、千鳥足のサラリーマン。通りを歩く人影は私を含めて、たった四人。目が眩むような中心街の華やぎが嘘のようだ。

「………寒い」

 誰に言うでもなく独りつぶやく。
 かすれた声が虚しく響いて、消える。

 ぎゅっと自分で自分を抱きしめて、うっすらと濡れはじめた道の真ん中で、うずくまった。

 冷たいコンクリート。
 鉛色が無表情で見つめ返してくる。





「どうしたの?」
 
 聞こえたのは、優しい声だった。





「……どこか痛いの?」

 顔をあげると、白々とした綺麗な手が控えめに差しだされる。街灯で逆光になっているせいか、その声の主がどんな顔をしているのかは分からない。

 足元には真っ赤なハイヒール。
 ふわりと広がるシフォンスカートから伸びた脚は細く、スラリとして美しい。

 まるでお人形みたいだな。
 なんとなく、そう思った。

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