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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第9章 xxx 08.遭遇



「あれ、泣いちゃったの?」

 まるい雫。頬をぽろぽろと伝う。
 徹くんのちょっと冷えた指先が伸びてきて、目から溢れたそれを拭った。

「女の子が恋のために流す涙はきれいだね。ほんと、純粋でさ、……すげえイライラする」

 素直に俺と寝とけばいいのにさ。
 彼はそう吐き捨てて身体を離す。

 一体どうして、なにが、彼をそうさせるのか。私を見下げる目は冷たく、そこには何の感情も見てとれない。

 いやだ。怖い。
 ただひたすらそう思って、震える足で逃げだした。アダルトフロアを仕切るカーテンを押しのけて、狭い通路をがむしゃらに抜けて、走る。


 ドンッ
 何かに、誰かに、ぶつかった。


「スンマセ……って、カオリ?」

「……っいわ、いずみ、さん」

 ああ、どうして。
 なにも今一番会いたくない人と巡り合わせなくたっていいのに。タイミングと神さまって、残酷だ。

 唇をきつく結んで、また走りだす。

「あっ、おい!カオリ!」

 岩泉さんの声が背中に突き刺さって、ぽろり、涙がこぼれる。拭っても、拭っても、次から次に落ちてくる。

 転がるようにして表に出て、キャッスルのキャッチが集まってる通りに背を向けて、国道沿いを走って、走って。

「っう……ひっ、く……ううっ」

 カッコ悪い。こんな風に泣くなんて。
 でも、なんかもう、どうでもいいや。

 ふと空を見上げるとそこは、分厚くて赤い、都会の曇天だった。

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