第9章 xxx 08.遭遇
蹂躙される。侵される。
触られてもいないのに蜜を出しはじめたそこが、本能の部分が、及川徹を求めてしまう。
それでもどうにか堪えて靡かずにいると、彼は、急にその声音を低く変えて喋りはじめた。
「ああ、そうだ……そういえばさァ」
ついさっきまでとは真逆な冷たい声。
気が短いのか、感情の起伏が激しいのか。ともかく機嫌を損ねたらしい徹くんは、私をその腕に閉じこめたまま、クスリと笑みを漏らす。
「岩ちゃんの味はどうだった……?」
「……っ!!」
岩泉さんの名前を出されて一気に顔に熱が集まった。その反応を見た彼はフッ、と鼻を鳴らして、嘲笑する。
「やっぱり惚れちゃったんだ」
言い返さない。言い返せない。
ドクドクと心臓がきもちわるい音を立てる。
「岩ちゃんって色管うまいからねー……何も他店の風俗嬢まで教育してやることないのにサ。まんまと騙されちゃった?」
色管。色恋管理。
聞いたことがある。黒服が店の従業員に恋愛感情を抱かせて、より一層仕事に励ませるっていう、あれだ。
「いいこと教えてあげよっか。岩ちゃんと、お前の店のオーナーね……裏で繋がってるよ」
「!! そん、な、ウソ信じな」
「嘘じゃないよ。岩ちゃんのために頑張っていっぱい客取ってイイ女になりたい、って、思ったでしょ?」
そんな、そんなことない。
岩泉さんはそんな人じゃない。
「かわいそうなカオリ。無知は罪だね」
「………っ」
「うちのホストにもいるよ。ハジメさんのために俺頑張ります!みたいな馬鹿が……それもいっぱいね」
もうやめてよ。聞きたくない。
お願いだから……もう。