第8章 xxx 07.恋愛禁止
『うだうだ喋ってる暇があんなら働きやがれボケェェェ!!』
『ふぎゃっ!』
『いてえっ!』
オーナーのチョップをもろに食らった私は、罰として、店で使うローションを買いにいく羽目になった。罰というよりセクハラに近い。
ちなみに光太郎は往復ビンタをお見舞いされて、鼻血を出しながらシーツ(客の使用済み)を洗濯中である。
「うう……マジで痛い」
冬が迫る寒空の下。
まだジンジンと痛む頭頂部をさすりつつ、国道に面した激安の殿堂をめざす。
特徴のある店内ソングが聞こえればそこは、この町の入り口だ。有名なアーチ型の看板にネオンライン。メインとなる通りでは、同業者が熾烈なキャッチ争いをくり広げている。
「お姉さん!そこの綺麗な貴女!」
「ちょっとお時間よろしいスか?」
時刻はシンデレラタイム。
この町の温度がもっとも上昇する時間帯。
道行く人々の間をすり抜け歩く、私の、店専用のベンチコート。店名が刺繍されたピンクの肩を叩いたのは──
「カオリちゃん発見☆」
クラブキャッスルNo.1ホスト、及川徹だった。
xxx 07.恋愛(開始)___fin.