第8章 xxx 07.恋愛禁止
深夜0時をまわる頃。
仕事へと戻っていった岩泉さんを見送った私は、スタッフルームでおにぎりをかじっていた。遅めの夕食タイムである。
「私、岩泉さんのお嫁さんになりたい」
ボソッと呟いたそれに、「は!!?」と光太郎が大袈裟な反応をした。咥えていたチュッパチャッ○スを落としそうになってるし、ていうか声がデカい。
「ななな、なん、なんで嫁!?」
「だって絶対幸せにしてくれるもん」
「はァ!? あ!お前まさか本番」
「してませーん。告白はしたけど」
「!!?」
カラン、と音を立てて地に落ちた飴玉。
あまりにも衝撃を受けたらしい光太郎は、普段のうるさすぎる声を失って絶句した。
梅干し味のおにぎりをまた一口。小さくかじってから、こう付け加える。
「でも、振られちゃった」
「は、……え、振られた? いや、俺的にはホッとしたけどね!! でも岩泉くんも満更じゃねえ感じだったじゃん」
「うん。でも、夜上がるまでは彼女作らないんだって」
「はーさすが岩泉くん、硬派だねェ」
「でもそれって逆に夜上がったら私をお嫁さんにしてくれるってことだよね」
「バカかお前話が飛躍しすぎだろ」
「バカにバカって言われたくないわよ」
何だと!何よ!とか、なんとか。
低レベルな痴話喧嘩をしていると、「うっせえぞゴルァ!」という怒声とともに勢いよくカーテンが開いた。光太郎と同時に振りむくと、そこには二日ぶりに見るオーナーの姿。
やばい。ドラム詰めで埋められる。
そう思ったときには既に手遅れだった。