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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第8章 xxx 07.恋愛禁止



 ぬるりと腰を突き出せば、岩泉さんの色っぽい息が空気を揺らす。これ以上なにも聞かれないように、間髪入れずに唇を塞いだ。

 見た目と違って柔らかい唇。
 どうか、もう、なにも言わないで。

「っん、う……ッ!」

 強張る彼の身体。
 白濁としたものが吐きだされる。今までのどんなキスより深く繋がって、岩泉さんから言葉を奪う。

 途端、肩を押しかえされた。
 上がった息もそのままに、彼は聞く。

「……っ急に、どうしたんだよ」

 こんなとき、何を言えばいいのか。どんな顔をすればいいのか。笑えばいいのかな。それとも、泣けばいい?

「わかんない」

「……カオリ?」

「……っわかんない」

 違う。分からないんじゃない。
 言いたくないだけ、あまりにも惨めだから。

 本当は分かってる。

 私には、なにもない。
 気付けばお父さんはいなかった。酒と男癖の悪い母に愛想を尽かして一人で出ていった。母は、それでも何も変わらなかった。

 小さな頃からずっと貧乏だった。友達なんかできたことなかった。いつも、いつも、ひとりでいた。

 ないんだ、私には、なにも。
 友達も、家族も、こころを寄せる場所も、希望も、未来も、なにも。

 だから、ここで生きていかなきゃいけない。恋愛感情なんか持ちこんでる暇はない。そんなもの、邪魔なだけ。ツラいだけ。

 だから、こうして、悲しい。

 母が蒸発して二週間と、二日。
 こころの奥に仕舞いこんだはずの虚無が一気に溢れだした。なにも岩泉さんの前でこんな風にならなくてもいいのに。

 何やってんだろ。私。

「ごめんなさ……っ私、」

 そこから先は、また、何も言葉が出てこなかった。

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