第7章 xxx 06.本番禁止
部屋を満たすのは沈黙だった。
シン、と静まりかえる室内に、フロアで流れているトランスの重低音だけが流れこんでくる。
「岩泉さん……?」
俯いている彼を覗きこんだ。
その頬はまたちょっと赤くなっているけど、表情までは伺えない。
ふと、岩泉さんが私を見る。手首を掴む彼の手に、いっそう力が篭もった。
「仕事、は……部下に任せてきたんで、大丈夫、です……それに、」
「……?」
「途中で帰るくらいなら、あいつら殴り飛ばしてでも逃げてた」
見つめられる。まっすぐに。
その瞳に捕まって、目を逸らすことができなかった。
「初めてここで見たときから、その、可愛いな、と……思ってたんで」
「そ、うだっ……たんですか」
私、今どんな顔してるんだろう。
たぶん彼に負けないくらい赤くなってる。こんなことで今日の業務が務まるんだろうか。
予約コースは60分+α
延長をいれても余裕で足りる金額を二人組が置いていったらしい。
深く大きく息を吸って、深呼吸。
さあ、お仕事をはじめましょう。