第7章 xxx 06.本番禁止
『いいかカオリ!絶対本番禁止だぞ!』
「わかってるってば……もう切るよ」
再三にわたって光太郎に釘を刺された私は、溜息がちに電話の受話器を置いた。
振り向くとそこには岩泉さん。
キャッスルの二人組──貴大と一静って呼ばれてた彼らだ、に羽交い締めにされて来店したらしい。ほぼ強制連行である。
「本当バカばっかりでスンマセン……」
「いえ、そんな……ご苦労さまです」
隣に座って笑いかけると、今日何度目か分からない「スンマセン」がまたひとつ。
ちょっと顔の赤みが引いてきたかな。
落ちつきを取り戻しつつある岩泉さんは、左腕をたくしあげて腕時計を確認した。
仕事のことを気にしているのだろうか。たぶん、キャッスルも今頃オープン作業をしてるはず。
「あの、お仕事戻られますか……?」
そろりと聞いてみた。
岩泉さんがこちらを向く。今日、初めて彼と目が合った。
「いや、う、……えっと」
「お代は結構です……ので、
今店の者に連絡いれますね」
カウンターに電話をかけようと立ちあがる。立ちあがろうとした。けれど、それは叶わなかった。
左手首を掴まれる感覚。
グイ、と後方に引っぱられて、ベッドに逆戻りになる。