第6章 xxx 05.不夜城
店主さんのつくる卵焼きは懐かしい味がした。なにが、って聞かれると、私にもよく分からないのだけれど。
「本当にスンマセンでした。
俺からもよく言っておくんで」
「いえ、……あの、
もう大丈夫ですから
頭を上げてください」
満腹になった私はと言うと、会計を済ませて外に出たところで、岩泉さんと立話をしていた。あとを追ってきた彼に呼び止められて、今に至る。
「従業員の粗相は俺の責任ですから」
「そ、粗相って……そんな」
ものすごく真面目な人なのだろう。
尚も謝罪する岩泉さんは、ほぼ直角で頭を下げ続けている。
ふと、彼の髪にキラリと光るものを見つけた。1センチ四方のそれは銀色で、クラブのショーなどで使う紙吹雪のように見える。
おもむろに手を伸ばして、小さなビニール紙をつまみあげた。
「!? っな、何すか!?」
「えっ、あ、これ……髪についてたので。勝手に触っちゃってごめんなさい」
「いっ……いえ、ありがとう、ございます。スンマセン」
ぎこちない動きで謝る岩泉さんは、顔を真っ赤にして口元を押さえている。
そんな私たちのやり取りを見ていたのは、光太郎だけではなかった訳で──