第6章 xxx 05.不夜城
「トオルさん!今日という今日は!売れるコツ教えて貰うまで帰りましぇんよ!俺、絶対帰りまひぇん!!」
「げっ!トビオ!」
ベロンベロンの青年が転がりこんできた。その顔は赤を通りこして青白い。スーツはあちこち汚れてるし、呂律も回ってないし。相当飲んだなあれは。
「……だれ?」
小声で隣にいる光太郎に問うと、呆れたような声が返ってきた。
「トオルくんの後輩。キャッスルのてっぺん取りたくて頑張ってんだとよ」
「ふーん」
事の次第をちょっと遠巻きに見守る私たち。
食堂にやってくるなり徹くんに絡みだした若いホスト。彼を押さえつけようとする岩泉さん、を、面白がって制止する悪そうな二人組。
てんやわんやって、こういう状況を言うんだろうな。
「さっさと飯食って帰ろう」
「そうだね。そうしよう」
光太郎と同時に嘆息して、やっと運ばれてきた卵焼き定食に手を合わせた。いただきます。