第6章 xxx 05.不夜城
「営業なんかかけてないもーん。ちょっと世間話してただけだよ。ねー、カオリちゃん」
ちゃっかり私の本名を覚えたらしい徹くん。両手で頬杖をついて、渾身の笑顔で微笑みかけてくる。
その姿はまるで王子さま。
実にキャッスルというクラブがよく似合うホストである。どっちかと言うと大王様って感じだけど。
「貴大!一静!お前らも黙って見てんじゃねえ!クズ川が迷惑行為したら止めろっていつも言ってんだろうが!」
「えーだってさー」
「止めないほうが面白いもんよ」
「及川さんもそう思いまーす」
「テメェら全員正座しろ!今すぐ!!」
岩泉さん、血管切れちゃいそう。
苦労してるんだなあ……だなんて、他人ごとのように思ってみたりして。
「ギャーギャーうっせえんだよ!キャッスルもまとめて出禁にすんぞ!?」
ほら、また怒られた。
店主さんからフライパンが飛んでくる前に静かにするべきである。というか私は一刻も早くお味噌汁にありつきたい。まだかな、卵焼き定食。
そんなことを考えていると、再び硝子戸が開いて、新たにお客さんがやってきた。