第5章 xxx 04.金融屋
「お前は虐め甲斐があるね」
瞼から眦、頬をつたって、唇に行きついた彼の指。
親指だったそれが人差し指に変わって、すっかりグロスが落ちてしまったそこを左右になぞられる。
下唇を押しさげられる感覚に肩が跳ね、次の瞬間にはもう、彼の指に口内を犯されていた。
「ん、む……っ」
キスで充分にほぐされた中を、骨張った指が這う。頬の裏を軽く引っかかれて、奥まで咥えろと言わんばかりに差しこまれる。
上下の唇を閉じて弱く吸うと、彼は満足げに目を細めて、笑った。
色味の薄い唇だけの笑顔。
ゆっくりと、妖しく笑う。
「カオリ」
語尾に疑問符をつけたように名前を呼ばれて、彼を見た。
「次はラストまでお前のこと買うわ」
なんともこの町の男らしい。潔い告白。この人にこんなことを言われたら、女なら誰でも淡い期待を寄せてしまう。
けど、所詮は風俗店。色恋さえも金で売買する箱のなかでの出来事。
こんなの全部、戯れだ。
「……ご予約お待ちしてます」
震える声で、精一杯強がってみせた。
xxx 04.金融屋___fin.