第5章 xxx 04.金融屋
羽のようなキスだった。
風俗嬢がそんなこと言ったら笑われるだろうか。でも、本当にそうだったんだから仕方ない。
「本名は?」
「……カオリ、です」
「カオリ」
私の言った名を確かめるようにゆっくりと反復する低い声。顎はまだ、彼にすくわれたままだ。
そして、そのまま二度目のキス。
「赤葦京治。俺の名前ね」
「あか、あし……さん」
「そう。覚えといて」
キスの合間に聞いた彼の名前。アカアシケイジ、珍しい名前。どんな字を書くんだろう。教えて欲しい。もっと知りたい。
あなたはどんな人?
そう問う代わりに差しだした舌を、彼の真っ赤なそれが絡めとった。
三度目のキスは、深くて甘い。
「……っん、はあ」
さっき塗り直したばかりのグロス。
私から移ってしまったラメが彼の唇を光らせて、なんだか無性に恥ずかしくなる。
舌先で歯列をなぞられて、応えるようにして口を開く。角度を変えて何度も唇が交わると、自然に頬が上気して鼓動がはやくなった。