第5章 xxx 04.金融屋
「マリン、だっけ、名前」
「はい……一応、ここでは
そういうことになってます」
「ふうん」
そこで話を切った金融屋さんは、これまた音もなく立ち上がってこちらに向かって歩いてきた。
たった数歩歩いただけで縮まってしまう距離。何をされるのかと視線を上げたが、彼がストンと腰を下ろしたことで、目線が同じ位置になる。
体育座りしたままでいる私。あぐらをかいて私を見る金融屋さん。どちらも、何も、喋らない。
彼の指がそっと伸びてきて、その刹那のできごとだった。
ベリィ……ッ
「!? 痛あっ!」
剥がされたのだ。付けまつげを。
それも容赦なく一息にベリッと。
「なっ!何するんですか!」
「いや、凄いまつ毛だなあ、と思ってさ。毛虫が乗っかってるみたいで気持ち悪かったから」
「だからって剥がしますか!剥がしませんよ!痛いなもう……絶対何本かまつげ抜けたこれ」
ちょっと涙目になって訴えると、金融屋さんは「それは大変だ」と素知らぬ顔。誰のせいだと思ってるんですかね。
ヒリヒリする瞼を指でさすっていたら、今度は顎をすくいあげられる。少し上を向いた状態で、彼と視線がぶつかった。
あ、れ……これはもしや。